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主題
演奏会を録る・配る・流すときの権利処理
1
「演奏」と「録音・配信」は別の話
2
自分たちの演奏をYouTube等に上げる場合
3
「原盤」と「実演家」の権利は別にある
4
肖像権——映る人の同意と、取りやめ・ボカシ
5
プロのソリスト・客演がいるとき
「演奏」と「録音・配信」は別の話
まず誤解しやすい点から。演奏会で曲を「演奏する」ことについては、非営利・入場無料・出演者無報酬の3条件をすべて満たせば、著作権法上、演奏そのものに許諾や使用料は要りません(著作権法第38条第1項)。ただし、これはあくまで「演奏」だけに効く免除です。録音・録画して配る・流す行為には、この3条件の免除は及びません。つまり、本番が無料公演でも、それを録って公開するなら、別に権利処理が必要になります。
- 3条件の免除は「演奏」だけ。録音・録画・配信は対象外
- 編曲して演奏する場合は、3条件を満たしても編曲の許諾が別に要る
- 「無料公演だったから録画公開も自由」とは限らない
- 録音・配信を予定するなら、演奏とは切り離して確認する
自分たちの演奏をYouTube等に上げる場合
アマチュア楽団で最も多いのが「自分たちの演奏を録画して、YouTubeやニコニコ動画に上げる」ケースです。これらの動画投稿(共有)サイトの多くはJASRACと包括契約を結んでいるため、自分で演奏した動画をこれらのサイトに上げる場合、アップロードする本人がJASRACへ個別に手続きをする必要は通常ありません(作詞・作曲にあたる著作権の部分が、サイト側の契約でカバーされます)。
- YouTube・ニコニコ動画などはJASRACと包括契約済み
- 自分たちの演奏のアップロードは、個別のJASRAC手続きが不要なことが多い
- ただしこれは「作詞・作曲の著作権」の話に限られる
- 包括契約の対象サイトかどうかは事前に確認する
「原盤」と「実演家」の権利は別にある
著作権(作詞・作曲)とは別に、録音物には「著作隣接権」が関わります。録音を作った人(原盤製作者)の権利と、演奏した人(実演家)の権利です。市販のCDやダウンロード音源を使う場合は、原盤製作者(レコード会社など)への許諾が別途必要になります。自分たちで録音した場合は原盤は自分たちのものなので問題は生じませんが、演奏した実演家の扱いは次の肖像権とあわせて確認します。
- 市販CD・ダウンロード音源を使うなら、原盤製作者への許諾が別に要る
- 自前録音なら原盤は自団のもの=原盤の問題は生じない
- 実演家(演奏者)の権利は、著作権とは別の権利として残る
- JASRACの手続きをしても、原盤・実演家の権利は別であることに注意
肖像権——映る人の同意と、取りやめ・ボカシ
見落とされがちですが、映像には「肖像権」も関わります。これは著作権とは別の、その人の姿に関する権利です。退団した人だけでなく、現在の参加者であっても、公開には本人の許可を得たうえで行う必要があります。許可を取るだけでなく、公開後に「映りたくない」と申し出があったときの対応もあらかじめ決めておくと安全です。
- 現メンバーも含め、映る人には公開の同意を得る
- 後から申し出があれば、公開の取りやめやボカシ処理で対応する
- 同意の範囲(限定公開か一般公開か、いつまで公開か)も確認する
- 客演・エキストラ・来賓・観客の映り込みにも注意する
プロのソリスト・客演がいるとき
プロのソリストや客演を招いた公演では、扱いがさらに慎重になります。所属事務所が映像の公開を認めていない(事務所NG)ことがあり、その場合は当然従います。事務所の許可がある場合でも、最終的にはソリスト本人の判断により、一般公開を避けて身内向けにとどめることがあります。具体的には、YouTubeの限定公開や、クラウド(Driveなど)での共有に限定する方法があります。
- プロの出演者は、所属事務所が公開可否を管理している可能性がある
- 事務所NGなら公開しない。許可があっても条件を確認する
- 公開の可否は、最終的にソリスト本人の判断による(一般公開を控える場合がある)
- その場合はYouTube限定公開やクラウド共有など、身内公開にとどめる
CDなど“モノ”にするときの手続き
演奏をCDやDVD・Blu-rayなどの「モノ」にする場合は、配信とはまた別に、JASRACの録音(複製)の手続きが必要になります。市販目的でなくても、団内配布や記念品としての少部数でも原則として手続きの対象です。プレスする枚数などに応じて使用料が決まるため、何枚作るかが固まった段階で確認します。原盤・実演家・肖像権の確認が必要なのは、ここでも同じです。
- CD・DVD化は、配信とは別に録音(複製)の手続きが必要
- 少部数・非売品の団内配布でも原則は対象
- 枚数が決まってから使用料を確認する
- 原盤・実演家・肖像権の確認はここでも必要
有料で売る・配信するとき——権利と税金
閲覧権の販売や、DVD・Blu-rayの有料販売など「お金を取る」形にすると、注意点が二段階で増えます。まず権利面では、商用利用として扱いが厳しくなり、JASRACの使用料区分、原盤・実演家の許諾、プロ出演者の事務所条件などを、無料公開のときよりも丁寧に詰める必要があります。次に税金面では、収入が生じることで税務上の論点が出ます。任意団体であっても、DVD販売のような物品販売を継続して行うと「収益事業」にあたり、法人税の課税対象になりうるほか、課税売上高が一定額(1,000万円)を超えると消費税の課税事業者になります。収益事業を始めた場合は税務署への届出も必要です。規模が小さくても、有料化するなら早めに税理士や税務署へ相談しておくと安全です。
- 有料化すると権利処理は商用扱いになり、確認事項が増える
- 任意団体でも、継続的な販売は「収益事業」として法人税の対象になりうる
- 課税売上高が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になる
- 収益事業の開始には届出が必要。判断に迷えば税理士・税務署に相談する
実務の段取り(チェックの順番)
迷ったら、次の順で確認すると抜けが減ります。
- 何を録り、どこで配る・流すか(YouTube/自前サイト/CD・DVD)と、無料か有料かを先に決める
- 本番の「演奏」の手続き要否(3条件)と、編曲の許諾の要否を確認する
- 使う音源は自前録音か市販音源か(市販なら原盤の許諾が要る)
- 映る人(団員・客演・観客)の肖像権の同意を取り、取りやめ・ボカシの対応を決める
- プロ出演者は事務所の可否・条件を確認し、必要なら限定公開にとどめる
- 有料化するなら、商用の権利処理と税務(収益事業・消費税・届出)を確認する